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UnpluggedのB面|ユダヤ人の格言に学ぶ、お金にまつわる賢い意識。

Supplement Pyramid Strategy お金で買う健康。サプリで効果が出るひと、出ないひと。

ユダヤ人の格言に学ぶ、お金にまつわる賢い意識。

金融市場をはじめ、メディア、映画、ファッション、宝石などさまざまなマーケットで活躍するユダヤ人。あらゆるビジネスで頭角を現す、かの民族の間では古くからお金にまつわるいくつもの格言が共有されています。それは歴史上、長きにわたって民族的迫害を受け、ヨーロッパでは土地所有はおろか、農業や製造業に従事することも許されず、数々の厳しい職業上の制限を負ってきた彼らならではの生き抜くための知恵とも言えます。ものごとの真理を的確に射貫きながらユーモアも忘れない。そんなユダヤ民族のお金にまつわる格言を、ユダヤ研究の第一人者・烏賀陽正弘氏にうかがいました。

  • Text_Jun Kumayama
  • Illustration_naohiga
  • Edit_Shinri Kobayashi

烏賀陽正弘(うがやまさひろ)
京都大学法学部卒業。幼少期をニューヨークとロサンゼルスで過ごす。東レ(株)に入社後、国際ビジネスに従事する。訪問した国は100ヵ国にのぼり、欧米や中国に多くの顧客と友人を持つ。海外より帰任後、同社マーケティング開発室長などを歴任。その後独立し、現在、国際ビジネス・コーディネーター、著述家、翻訳家として活躍。著書に『ユダヤ人ならこう考える!』『頭がよくなるユダヤ人ジョーク集』『超常識のメジャーリーグ論』(以上、PHP新書)、『ユダヤ人の「考える力」』(PHP研究所)など。

「金の鍵は、すべての戸を開く」

「金の鍵」とは「お金」。つまり金さえあれば、様々な可能性が開かれる。かつてユダヤ人はお金がないばかりに、言語を絶する苦い思いをさせられ、自分の幸や不幸だけでなく運命すらも、お金によって大きく左右されました。その苦境を、知恵とお金という具体的な手段で解決してきたのです。

「お金が人生のすべてでないと言う人に限って、何時まで経ってもお金がたまらない」

世の中には「お金がすべてでない」という人がいますが、ユダヤ人には通用しません。ユダヤ人は、そんな彼らを、お金がないのをやせ我慢しているか、それとも、お金のもたらす効果をよく理解していない人だと考えています。歴史的にお金の力を熟知したユダヤ人ならではの格言です。

「貧乏になると、まず顔に表れる」

わが国では「武士は食わねども高楊枝」と、体面を重んじて生きることを称えますが、ユダヤ人には、この考え方は通用しません。ユダヤ人にはお金を儲けることは、後ろめたい行為でなく、恥でもないのです。むしろ貧乏である方が恥であり、それがまず顔に現れるとします。「貧相」と言うように、貧乏をすると、生活態度や悩みが顔に出やすくなるものです。

「重い財布は、心を軽くする」

裕福な家庭でも、妻との不和や子供の病気などで悩まされます。金持ちだからといって、家庭的に幸せだとは限りません。お金は必ず幸福をもたらしませんが、幸福になることを助けてくれます。好きな旅行をしたり、ドレスを買い、治療費や子供の学費をまかなうにもお金が要ります。このようにお金は、人を幸福になる助けとなり、なければ不幸になりがちだとユダヤ人は教えるのです。

「車輪に潤滑油を差すと、初めて車が走る」

これは20世紀の著名なユダヤ人文豪、ショーロム・アレヘルムの金言です。お金を潤滑油に例えて、お金の本質を見事に喝破しています。私たちがお金について、当たり前のように考えたり、気がつかないところに、意外とその本質があることを彼らは教えてくれます。具体的に言うと、彼らにとって賄賂が典型的な例ではないでしょうか。先方が悪意に満ちた行動を起こそうものなら、それを変心させる決定的な有効手段は、まさしくお金だったのです。

「よき友は買わなければならないが、敵はタダでもできる」

支配者が、ユダヤ人を住んでいる所から追放しようとしています。その決意を変えさせたのは、お金、つまり賄賂だったのです。例えば11世紀に、ユダヤ人社会はスペインで黄金時代を迎えましたが、そこへ侵攻したアラブ教徒軍から身を守るために、賄賂が度々使われた話が数多く残されています。この格言はそれを端的に示しているのではないでしょうか。

「レストランに行ったら、ウエーターに一番近い席を取れ」

誰でも経験しますが、レストランで、ウエーターから離れた席に座ると、注文しようとして、手を振っても、なかなか来てくれません。ウエーターの近くにいる客よりも、後回しにされます。同じ金を払うにしても、サービスが早く受けられる席に座るべきです。要するに、選択を迫られたら、よく考えた上で、手近で確かなものを狙えと、リアリズムに徹することを諭しています。

「人に金を貸せば、敵を買ったことになる」

お金を貸すと、親しい間柄や関係にあっても、えてして、期日通りに返却してくれません。そのトラブルがしばしば起こり、相互関係がぎくしゃくして、友情や取引関係が損なわれます。友人や顧客だったのが、敵になってしまうので、お金は魔物です。親しい間柄であっても、お金を貸さないことに越したことはありません。片や、借りるのも避けるべきです。ユダヤ人は「金を借りると笑うが、返済するときは泣く」と、お金を借りる悲哀をうまく表現しています。

「たまにしか入らない1ドルよりも1セントを取れ」

いつ手に入るかわからない大金を狙うよりも、わずかな金額でも、目の前の確実に入るものを手にせよと忠告します。人は実に慾が深いものです。身近な金よりも一攫千金を狙いがちです。ボーナスを支給されたとしましょう。銀行に預けても超低金利ですが、株価は上昇しているので値上げが期待します。しかし株価の変動は激しく、長い目で見ると大損することが少なくありません。儲けが僅かでも、確実に儲かる定期預金に預ける方が得なのです。

「きみを心底から信用するよ。だが、現金で支払ってくれ!」

相手が、たとえどんなに信頼のおける、親しい仲や取引関係にあっても、支払手段として手形や証書、あるいは口約束などでは、ともすればトラブルが起こりやすい。手形が不渡りになったり、契約条項や約束が履行されなかったりすると、代金の不払い問題がしばしば起こります。だが現金取引なら、間違いが起こらないキャッシュで受け取れるので、安全で確実なのです。

「お金を稼ぐより、節約する方が難しい」

お金を稼ぐのは確かに難しいのですが、それにも増して、お金を節約することの難しさと大切さを、逆説的に説いています。お金に関心を持てば、その使い方に細かくなります。そこでユダヤ人は、お金を賢く合理的に使うことをよく考えるのです。財布の紐を解く前に、その品物に値する価値と目的が果たしてあるのかどうかを仔細に検討し、見極めます。値引きやサービスなどの余地がないかを交渉して、少しでも節約しょうとするのです。