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UnpluggedのB面|お金で買う健康。サプリで効果が出るひと、出ないひと。

Supplement Pyramid Strategy お金で買う健康。サプリで効果が出るひと、出ないひと。

Supplement Pyramid Strategy

お金で買う健康。サプリで効果が出るひと、出ないひと。

現代人にとって、健康に投資するのはもはや当たり前。そして、多少はお金をかけてでも取り入れたい健康術こそ、賢い消費なのではないだろうか。忙しい毎日、運動不足や日々のストレスケア、栄養不足をサプリで補っているひとも多い。しかし、サプリさえ摂っていればいい、というわけではないらしい。キモとなる成分、飲み方などのポイントを大手サプリメントメーカーでサプリ開発に携わっている水野雅浩さんに聞いた。

  • Text_Satoru Kanai
  • Illustration_Mariko Kumaki
  • Edit_Shinri Kobayashi

水野雅浩
ベンチャー企業にて、介護事業の全国展開に携わり最後は、支社長を歴任。その後、香港にて高級日本食レストランの立ち上げと運営に携わりミシュラン香港にて星を獲得。現代の医食同源にあたるサプリメントメーカーでの商品開発のプロジェクトリーダーを務める。書著に、『「稼げる男」と「稼げない男」の健康マネジメント』(明日香出版社)、『「太らない」「疲れない」21の習慣』(飛鳥新社)。ビジネスマンのコンディションを整える健康マネジメントセミナーを開催。
healthylifepj@gmail.com

CURE(治療)よりもCARE(予防)を。

「食事を摂らないでサプリだけで生活していたひとが、健康診断で栄養失調と診断された、なんてこともあるんです」

これは、取材の終わり際に聞いたエピソードだ。近年、完全栄養食も売り出されたが、まだまだ議論の余地はありそうだし、どんなにサプリメントを摂っていたとしても、カップラーメンはバランスのいい食事の代替にはならない。ただし、忙しければ忙しい社会人こそ健康体であることは必須だ。

「これからのあたらしい働き方とは、健康にきちんと投資をして自分自身をメンテナンスしていくこと。昔は病気ではないことが健康で、体調崩したら病院にいけばいいという考え方でした。ですが、これからはキュア(治療)ではなく、普段からのケアが重要です。食事を選び、そのなかの補助としてサプリメントを選ぶ。ジム通いも快適な睡眠のために買う枕も、すべては投資。より高いリターンを回収していくのに必要なのは、なによりもまず健康リテラシーなのです」

水野さんはサプリメントをオススメする前に、まずは健康における4本の柱――食事、睡眠、運動、ストレスケアこそ重要と説く。さらにそれがサプリメントの効果をより発揮するとも。

4つの柱。

食事

食事で意識するのは、タンパク質と野菜をしっかり摂取すること。とくに野菜が不足しているので、一日にこぶし5つ部分の野菜を食べるように心がける。

ストレスケア

ストレスケアなら、自分がどんなときにストレスを感じるのか、またストレスがかかったときに何をすれば軽減されるのかを書き出しておく。受験と一緒で、傾向と対策を把握することが大事。

運動

早歩きでも軽いジョギングでもいいので、毎日体を動かすこと。歩くよりも運動強度の高いものを取り入れるのが重要で、普段歩いている駅までの道のりを早歩きするだけでもいい。鍛えるためというよりも、カラダと心をベストパフォーマンスに保つためで、ストレス解消において、運動にかなう薬はない。

睡眠

寝る前に5分くらいの軽いストレッチをする。多くのビジネスマンは仕事で心身が緊張したままベッドに入っているから、疲れが取れないのだという。これをやるかやらないかで、睡眠の深さが全然違うらしい。ちなみに、日本人の睡眠不足がもたらす遅刻やミスの経済的損失はなんと5兆円! 売上を伸ばすつもりが損をしていたとは…。だったら、たっぷり寝たほうが確実にパフォーマンスは上がるはずだ。

もちろん、こういった健康法をしっている人も多いはず。これらは基本で、このうえにサプリメントを上積みすることで、大きな効果を得ることができる。サプリ初心者やこれまでに効果が出ないと薄々は感じていたという人には、これから紹介する「サプリメント ピラミッド ストラテジー」という考え方が役に立つはずだ。

3段階で見るサプリの取り方。

STEP 01:基本の3大サプリ。

サプリを取り入れるとき、どこから手を付ければいいのだろう。よく「自分にはビタミンCが足りていない“気がする”」とか「目が疲れているからブルーベリーでしょ」なんて生半可な知識を頼りにするひともいるが、水野さんはこれでは効果は望めないという。まずは、以下の3つからサプリメント生活をスタートすることで、栄養の受け皿となる体内環境を整えよう。

食物繊維(Fiber)
幸せは腸で感じる。ここからはじまる第六の栄養素。

これまで野菜のカスとしかみなされていなかった食物繊維が、近年では「第六の栄養素」と言われるまでに注目を集めている。食物繊維には、腸内の善玉菌のエサになることと、便を絡め取って出してくれるというふたつの役割がある。

「腸内に善玉を増やすためにヨーグルトを食べるのもいいのですが、これは体内にない善玉菌を助っ人として呼ぶようなもの。それよりも、すでにカラダのなかにいる善玉菌にエサ(食物繊維)をあげて元気にしたほうが効果は上がります」(水野)

また、自殺率と腸内環境には密接な関わりがあるという研究結果も発表されているそうだ。「肉に偏り、野菜が少ない食生活は腸内環境を悪化させます。その結果、幸福を感じるためのセロトニンが分泌されなくなり、うつ病や自殺に繋がる」そう。日本人の3倍もの食物繊維を取っているメキシコは、ラテンという国民性もあるが、腸内環境がいいためか、自殺率も非常に低いという結果も出ているらしい。

さらにサプリで栄養を摂取し、その効果を最大にするためにも、食物繊維で腸内腸内をキレイにしておくことが大事になる。

マルチビタミン・ミネラル(Malti Vitamin&Mineral)
足りないものだらけ。だからマルチに補うべし。

食料が行き渡っていなかった時代は、栄養素のなかでも「ビタミン・ミネラル」が“絶対的”に不足していた。しかし、飽食の時代においては脂やタンパク質を過剰に摂りすぎ、それに見合うだけの「ビタミン・ミネラル」が“相対的”に足りていないという。

「会食でフランス料理の店に行くなど、食事の内容をコントロールできないこともありますよね。ただ、洋食のような、糖質や脂質が多い偏った食事をすると相対的に『ビタミン・ミネラル』が不足がちになります。また、『ビタミン・ミネラル』はチームプレイで効果を発揮する性質を持つのですが、何かひとつでも足りないとその力は発揮されないのです」(水野)

普段の食事で「今日はビタミンのどの栄養素が足りてない」なんて、なかなかわからない。基礎を整える意味でも、まずは「マルチビタミン・ミネラル」でバランスよく摂るようにしよう。

プロテイン(Protein)
筋トレしないひとも摂るべきもの。

マッチョになるためというイメージがあるが、プロテインはカラダを構成する上で欠かせないタンパク質。けっして、ジム通いをしているひとの専売特許ではない。むしろ、すべての人間が摂るべき栄養素なのだ。

「朝にスプーン1杯の『プロテイン』をオレンジジューズに溶いて飲むのがおすすめです。それだけでもサンマ1匹分に相当しますからね。ちゃんとカラダの材料となるものを入れた上で出社するのか、空腹にコーヒーだけで出社するのか。午前中のパフォーマンスが全然ちがってきます」(水野)

カラダを構成するタンパク質は朝が一番不足しがちとのことなので、取り入れやすい朝食で補おう。

健康を“発展”させるサプリメント。

STEP 02:健康をブーストする。

ピラミッドの中間階層を担うサプリメントは、ベースとなる栄養素を積み重ねて得られた健康を底上げする役割。

DHA・EPA
血流をよくして、ブレインハック!

「サカナ、サカナ、サカナ〜」という歌でもおなじみ、魚の脂に含まれる「DHA・EPA」は頭がよくなることで有名。数多く発表された論文が裏付ける通り、記憶力維持にも貢献し、脳をベストコンディションに保ってくれる。また血液はサラサラに、血管をしなやかにしてくれるため、病気になる確率もかなり低くなる。血管は、栄養素と酸素がめぐる道路の役割を担う。フレッシュでサラサラな血液をカラダや脳に行き渡せるためにも「DHA・EPA」は有効。健康と仕事の成果を上げるダブルの効果が期待できる栄養素だ。

ビタミンC(VitaminC)
過剰摂取をオススメ!

現代社会はストレスフルだ。ぼくらは、生活しているなかで老化の原因となる活性酸素というカラダのサビをたくさんつくり出し、ストレスにまみれている。ストレスに対抗するため、カラダのなかでは「コルチゾール」が分泌される。このホルモンをつくり出すのに必要なのが、よく知られた「ビタミンC」だ。

摂りすぎるとオシッコが黄色くなるなんていう話を聞くけど、これは過剰に摂ったものが流れ出ているため。水野さんからは、「むしろ過剰に摂ることをオススメしています。ビタミンCはものすごいペースで減っていくし、水溶性でカラダのなかに留めておくことができないんです。シャンパンタワーのように大量に摂ってカラダを『ビタミンC』で満たしてください」と、おどろきのアドバイスをもらったが、タイミングとしては朝昼晩に加えて、寝る前にも摂るといいそう。

また、「ビタミンC」と相性がいいのが、水野さんがエース(A.C.E.)と呼んでいるビタミンAとEとの組み合わせ。

「この2つが加わることで、よりカラダのサビを取る幅が広がります。マルチビタミンにもAとEは入っているのですが、タバコやお酒もたしなみ、ストレスが多い方は、人よりも体が老化している可能性があります。より積極的にケアしたい人は、追加してもいいと思います」(水野)

サビついた体を無理やり動かそうとして、車にとってのガソリンと同じエナジードリンクや栄養ドリンクを飲む。しかし、ガソリンを入れてむりに動かさずともカラダのサビを取り除くだけでまた快適に動けるようになり、パフォーマンスもあがるというわけだ。

ビタミンD(VitaminD)
日光浴が生み出す太陽のビタミン。

日本ではあまり知名度がないが、アメリカでは「マルチビタミン・ミネラル」、「ビタミンC」と並んでトップ3に入る「ビタミンD」は、免疫力を上げるための重要な栄養素。1日30分ほど太陽の光を浴びることで生成されるのだが、これはオフィスワーカーには難しいだろう。やはり曇りや雨が多く太陽の光を浴びづらいイギリスでは、ドラッグストアで大きく扱われているそうだ。免疫力を高めれば、風邪にもかかりにくくなるし、仕事の質も上がる。いいとこ取りのサプリメントで健康維持を。

健康には自分との対話が欠かせない。

STEP 03:カスタマイズ・サプリという飽くなき探究。

健康を支える4つの柱を整え、ここまでに紹介したサプリを試せばおよそ1カ月で結果が現れるという。サプリメントを飲んでみて、体調の小さな変化に気がつけるひとこそがサプリを活用できると、水野さんは言う。

「カラダと対話できないひとは、大量に摂ってなにが効いているのかわからなくなっちゃいますからね。健康的な生活を心がけて、ベースのサプリメントを摂るだけでも高く安定した健康状態になります。あとは、自分のライフスタイルに合ったサプリメントを選んでください」(水野)

健康であることは、生命力の象徴であり、すなわちカッコよさに繋がる。世の流れをみても、不健康自慢は流行らない。健康であることこそがヒップの証。とは言え、たのしくて痛飲する夜もある。普段からビタミンA.C.E.を摂っておけば充分にアルコールを消化できるカラダになるようだが、酒好きなら肝臓ケアにも効くビタミンBを増やしてもいいかもしれない。そうして、自分のカラダと対話しながらトライ・アンド・エラーを繰り返し、自分だけのサプリを見つけていけば、大きなリターンを得られるはずだ。

健康Q&A
亜鉛が精子増強に効くってほんとですか?

カラダのなかで生殖器にも高濃度に存在し、精子をつくるために必須の栄養素である亜鉛。アメリカでは「セックスミネラル」と呼ばれることもあるとか。しかし、亜鉛を飲んだから精子増強に効くわけでもないそう。「亜鉛はたんぱく質の合成や新しい細胞を生み出すのに欠かせない成分です。あくまで、生活リズムが整っていれば効果があるでしょう」とのこと。サプリに頼らず、体力づくりとテクニック(笑)に磨きをかけよう。

サプリメント豆知識

フレッシュローテーション:サプリメントも食品と一緒で鮮度が落ちていくため、開けたら1ヶ月以内に必ず飲みきること。値段は安いものでOK。

分散スタイル:1日3粒が目安なら、朝昼晩にわける。

タイミング:各サプリを摂るなら、カラダが栄養を吸収する準備をしている食事の後がベスト。